「プレゼンが上手ければ契約は取れる」
昔の私はそう思っていた。
資料を磨く。
話し方を磨く。
ロジックを磨く。
もちろん大切だ。
だが営業を続ける中で、ある事実に気づいた。
企業プレゼンは、
プレゼンの場で決まるとは限らない。
むしろ本当の勝負は、その後に始まる。
会議室を出た後。
担当者が社内で説明する時。
決裁者へ話を上げる時。
その瞬間に勝負が決まる。
だから企業プレゼンで本当に重要なのは、話す技術だけではない。
相手を理解し、相手の味方になることだ。
「相手はあくまで個人」
「プレゼン後のプレゼン」
営業を始めた頃、とにかくプレゼンを学んだ。
生き残るためだった。
営業経験も浅い。
実績もない。
武器もない。
だから本を読んだ。
読みまくった。
今思えば、本屋の営業コーナーの売上に少しは貢献していたと思う。
その中で何度も読み返した一冊がある。
『プロフェッショナルプレゼン』
そこで出会った言葉が、
今でも私の営業スタイルの土台になっている。
「相手はあくまで個人」
そして
「プレゼン後のプレゼン」
この二つだ。
当時は何となく理解した気になっていた。
だが実践を重ねるほど、
その意味の深さを知ることになる。
営業を始めたばかりの頃は、
自社の商品ばかり見ていた。
どう説明するか。
どう魅力を伝えるか。
どう競合に勝つか。
だが、この考え方には大きな欠点がある。
主役が自社になっている。
本来の主役は誰か。
もちろん相手だ。
もっと言えば、相手企業の担当者だ。
企業プレゼンというと、
つい会社対会社で考えてしまう。
しかし実際に提案を受けるのは人間だ。
決裁者へ説明するのも人間だ。
社内で調整するのも人間だ。
稟議書を書くのも人間だ。
つまり企業相手の営業に見えても、
本質的には個人対個人なのである。
この視点を持つだけで営業は変わる。
まず相手を知ろうとする。
何に困っているのか。
どんな目標を持っているのか。
何を評価されているのか。
何を恐れているのか。
ここを理解しないまま提案しても響かない。
なぜなら相手の人生に接続されていないからだ。
私はこの考え方を知ってから、
相手との接触頻度を増やした。
電話。
メール。
手紙。
ハガキ。
今なら少しやり過ぎだと言われるかもしれない。
だが当時は本気だった。
そして徹底したことがある。
約束を守ることだ。
資料を送ると言ったら送る。
折り返すと言ったら折り返す。
期限を守る。
小さなことだ。
だが信頼は小さな約束の積み重ねでしか生まれない。
そして信頼ができると相手は本音を話してくれる。
本当の課題が見えてくる。
すると提案の質が変わる。
ここで重要になるのがもう一つの言葉。
「プレゼン後のプレゼン」
である。
新人時代の私は勘違いしていた。
プレゼンが終われば仕事も終わりだと思っていた。
違った。
むしろそこからが始まりだった。
考えてみてほしい。
提案の場に会社の全員が参加することはない。
参加者は数人だ。
その後、担当者が社内へ持ち帰る。
上司へ説明する。
役員へ説明する。
決裁会議で説明する。
その時、担当者が説明しやすい状態を作れているか。
これが極めて重要だった。
だから私は資料を工夫した。
他社事例をまとめた。
導入前後の比較を整理した。
メリットだけでなくデメリットも説明した。
担当者が社内で話しやすい材料を準備した。
まさに「プレゼン後のプレゼン」である。
すると不思議な変化が起きる。
相手が協力者になる。
提案を通そうとしてくれる。
一緒に課題解決を考えてくれる。
気づけば関係性が変わっている。
業者からパートナーへ。
パートナーから仲間へ。
この変化は大きい。
情報共有の壁も低くなる。
相談も増える。
競合比較ではなく、まず相談される存在になる。
営業で最も強い立場はここだと思う。
商品が優れている会社ではない。
話が上手い営業でもない。
相手と同じ方向を向ける人だ。
プレゼンとは話す技術ではない。
相手を理解する技術だ。
そして企業プレゼンとは会社への提案ではない。
担当者の成功を支援する活動だ。
そう考えると営業はもっと面白くなる。
相手はあくまで個人。
そして本当の勝負はプレゼン後に始まる。
この二つの言葉は、今でも私の営業人生を支えてくれている。